シャーデンフロイデ 中野信子 ☆☆☆☆☆☆
私たちが「人間性」と呼んでいるものの正体は、一体何なのか。
人間性を無条件にいいものと考えているが、実際はどうなのか。
…誰かが失敗したときに、思わず沸き起こってしまう喜びの感情。
…愛譲歩ホルモン、幸せホルモンと俗に言われ、基本手kには人間に良い影響を与える。
そのオキシトシンが妬みの感情も強めてしまう働きを持つ。
オキシトシンの分泌の効果
…血圧を下げる。
心拍が遅くなる。
皮膚、粘膜の血液量が増える。
筋肉の血液量は減少する
コルチゾール(ストレスホルモン)濃度を下げる。
消化吸収がよくなっる。
オキシトシンを分泌できないマウス⇒ストレスに極めて弱い。新しい環境に適応することが苦手。
オキシトシンは「愛と絆のホルモン」という言葉で表現できる。
オキシトシンを注射したマウスは好奇心旺盛⇒不安を軽減する効果
オキシトシンは「愛着を形成する」
⇒人と人とのつながりが切れてしまいそうになるとき、オキシトシンがそれを阻止しようとする行動を促進する。
オキシトシンは出産時に一番高まる
オキシトシンの働きを阻害する物質を実験動物に注射すると、その個体は子育てに無関心になる。
子供は人の事を気遣わない
大人になるにつれて高社会性が高まってくる
⇒高社会性が高まると、合理的な判断は次第にしにくくなってくる。
⇒オキシトシンが高社会性を高める。
もう一つの絆ホルモンの受容体「アルギニン・パソプレシン・レセプター(AVPR)」
⇒AVPRのとある型をもっていると、男女ともに長期的な人間関係を結ぶのが難しく、パートナーに対し不満度を高める。
→この型を持つ人は未婚率・離婚率が高くなる
なぜ離婚は叩かれる?
動物は「種を残す」ことを目的にする。
一夫一婦では、「自分たちの共同体をを守る」こと、
浮気性の人は「少しでも多くの個体と交わる」ことで
自分の遺伝子を残そうとしている。
シャーフロイデの効果によって出る杭は叩かれる。
⇒誰かを叩く行為というのは、本質的にはその集団を守ろうとする行動であり、向社会性が高まった末の帰結かもしれない
ソロモンアッシュの実験
⇒サクラの選んだ明らかな誤りに3割の人が同調してしまう。。
⇒ドーパミンが残りにくく、意思決定が楽しくない
低いタイプ
⇒自分で意思決定することが楽しい。従前のやり方を踏襲することに魅力を感じない。
☆☆東アジア人は自分で意思決定することを楽しいと感じるのは3割もいない。
一方、ヨーロッパでは6割近くが自分で意思決定したいタイプ。
高度成長というフィールドでは、集団の絆を深め、逸脱者を排除するという組織だった。→均一で良質な人材を大量生産することができ、経済の発展にもつながった。
⇒しかし、社会構造が変わってきた現在、それが必ずしも理想的ではなくなってきた。⇒高いポテンシャルを持つ人間を均質的でなく育てることが必要。
人間の脳はなまけもの、できるだけ考えたくない。
考えたくないが、失敗したくない。
⇒多数派についていくという判断を下す。
その集団への愛着が深くなると、他のグループとの溝が深まる
⇒企業のセクショナリズム化
かつての日本の宮大工は、作品に自分の名前を残さなかった。
⇒名前を入れることで「出る杭」いけにえになる危険性
最後通牒ゲーム
10万円を山分け
Aさんが配分を決める。
Bに配分提示。OKすればその通り配分
Bが受け入れなければどちらももらえない。
Aの取り分が7割を超えると拒否権の発動される率が8割を超える。
⇒自分の取り分を犠牲にしてまで他人にもうけさせたくない
→協調性の高い被験者の方が、拒否率が高かった。
=フェアであることを求めるため、不正に利益を得ようとしている相手を許すことができない。
☆☆⇒協調性が高い人=攻撃的という一見矛盾した結論。
セロトニン…不安を感じにくくする物質
日本人は98%が密度が低いタイプ
⇒自分が損をしてでも不公平、ずるに対して一矢報いる。
日本人はセロトニンが少ない=不安を抱きやすい
⇒自然災害が多いから?
英会話能力が低い=失敗に対する不安が大きい⇒間違えたら恥ずかしい。
日本人が不安症心配性であることは当然のことだといえる。
ミルグラム実験からわかること。
特定の環境課では、倫理的に正しいと評価を得ている人が、あたかも表演したかのように暴力的になる。
⇒☆☆☆倫理的に正しい人は、自らの置かれている環境を支配する「ルールに従順である」だけ。
総括☆☆☆☆☆☆
人間性にスポットを当てた本。
科学的な観点から、なぜ嫉妬などの感情や、共同体の中で個人を叩くのかなどを解説した本。
あまりないアプローチからの論の展開であり、非常に興味深かった。